翔泳社刊
「奪われし未来」より
不透明な未来
ページ 概 要 p347 ヒトを対象にした研究によれば、現在みられるレベルの汚染物質でも、精神の発育を損ねるには十分であり、IQでいえば五点減になるという。 p348 ストレスへの過剰反応 p349 汚染物質と子どもへの親の無関心や暴力 p350 ホルモン作用撹乱物質が、人間の社会や行動に厄介な問題を引き起こしているのかどうか、もしそうだとすれば、どの程度深刻なのかについては、まったくわかっていない。・・・同時に動物実験からは、発育期にこうむった有害化学物質の影響が、その後も、学習能力や行動に影を落とすという事実が明らかになりつつある。ホルモン作用が撹乱されると、縄張り意識のようなある種の行動傾向が増すか、親なら当然果たすべき監督と保護といった、ごく普通の社会行動が取れなくなる可能性が出てくる。
自然をねじ伏せようとしてきた人類が、当初の思惑とは裏腹に、生殖能力をはじめ、学習能力や思考力までをも損ないかねなくなっているというのは皮肉な話である。合成化学物質を使った、大規模な実験の材料に人類がいつのまにかなってしまったことは当然の報いようにも思われる。
ホルモンメッセージを撹乱する化学物質は、人類を、人類たらしめている豊かな可能性を奪い去る力を持っている。
ページ | 概 要 |
p351 | 生物は環境を変えずには生きてゆけない。これはすべて生命あるものの性である。微生物が地球大気の化学組成を変えはじめた20億年前から、このことは何もかわっていない。・・・しかし、人類がこの地球に登場してからの数億年は人為的な環境汚染は個別に見られたにすぎなかった。・・・ところが状況は一変してしまった。20世紀とは、人類と地球との関係が新たな段階に入った、まさに「転換の世紀」である。科学技術に備わった未曾有の力が、地球上に暮らす人間の増加と相まって環境変化の規模を地域単位から、地球全体へと変えてしまった。そして地球の生命システムはすっかり様変わりしつつある。この一大変化は地球規模の壮大な実験といってよい。それは、人類をはじめ地球上の生きとし生けるものすべてを、知らず知らずのうちに巻き込んだ実験だ。 |
p352 |
中には、人体の生理にまで影響を及ぼした化学物質もある。こうして地球を保護しているオゾン層にぽっかりと大きな穴が開いたり、ヒトの精子数が激減したりしているのだ。・・・とりわけ病んでいるのは生命維持システムだ。これまでに起きた被害の大きさを考えると、心ある人はかなりショックを受けるだろう。 |
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