あなたへの警告

翔泳社刊
「奪われし未来」より

要約「奪われし未来」

索引

  要約12  要約13  要約14 

子孫を絶やす50の方法

ページ 概      要  
PCBの旅

合成化学物質のおかげで家庭生活は、この上なく便利で、快適なものになった。その、代償として有害化学物質が自然環境に蔓延するという、結果をもたらした。特にPCBは、おぞましいまでの安定性、揮発性に加え脂肪への著しい親和性を備えている。この種の有害物質には、PCB、DDT、クロルダン、リンダン、アルドリン、ジエルドリン、エンドリン、トキサフェン、ヘプタクロル、そしてダイオキシンがある。
レイシン市は、石炭を燃やして調理用などのガスに変えていた、工場の跡地に、一大娯楽施設の建設に着手、埋め立てのために巨大な石が沈殿物の上に投げ込まれ、泡立つ硫化水素ガスの中にもぐりこんだPCB分子は、ミジンコの脂肪に収まることとなる。PCB濃度はミジンコの体内で(ミジンコの命はわずか10日)水中濃度の400倍となる。
ミジンコはアミという甲穀類の餌となる。アミはキュウリウオの餌となり、濃度は17倍となる。次にキュウリウオは2年ほど湖を周遊した後、マスの餌食となる。5年程たちマスは、ヒトに釣りあげられるが、廃棄処分になり埋立地に運ばれた。そこにはセグロカモメが待ちかまえていた。PCB分子は、オンタリオ湖に12年以上棲み付いていたセグロカモメの脂肪に収まる。そのときの濃度は、水中におけるそれの2500万倍となっている。セグロカモメは160キロメートル離れたスコッチ・ボンネット島で産卵。親カモメから卵黄の中に受け継がれたPCB分子は、孵ることもなくウミザリガニの餌食となる。やがて、ウミザリガニはアメリカウナギの夕食となる。ウナギは産卵期になると河を下る、セント・ローレンス川を経て海に出て産卵し、一生を終える。その死骸は海水で分解され、PCB分子は新たな旅を始める。PCB分子を含んだ海草はカイシア(小エビのような生物)の体内へ。アイスランドの東320キロメートルの地点のことである。海流に乗って流され、グリーンランド海に、そこにはホッキョクダラ大挙して押し寄せる。その体内では4800万倍に濃縮されている。ホッキョクダラはワモンアザラシの餌になる。そしてワモンアザラシはホッキョクグマの餌食となる。数年後、ホッキョクグマは出産し、生まれた子どもは、母乳で残留性化学物質を受け継ぐ。ちなみみ、PCB濃度はその過程で当初の30億倍になっている

 165  人体の脂肪組織中には、少なくとも250種類の汚染化学物質が混入している
168 母乳から乳児が得るものは、愛や栄養分にとどまらない。DDT、PCBをはじめとする残留性化学物質が、自然環境全体に蔓延しているのと同様に、人体脂肪および母乳にも蓄積されつつあるという事実が、明らかになったのはここ30年のことである。
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半年に及ぶ授乳期間で、乳児は許容されているダイオキシンの、生涯摂取量を体内に取り込んでしまう。カナダの、保険局によるとイヌイット族の子どもの大半には、慢性的な耳の感染症が蔓延しているという。また、最新の研究では免疫系の異常も確認されている。天然痘、はしか、ポリオなどの予防接種をしても、イヌイット族の子どもの免疫系では抗体が産出されていない。そのため子供達の抵抗力は著しく弱い。 このように、地球上には安全で汚れなき場所など望むべくもない。


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