あなたへの警告

翔泳社刊
「奪われし未来」より

要約「奪われし未来」

索引

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子孫を絶やす50の方法

ページ 概      要  
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謎の汚染物質の正体が、PCBであることを、1966年に英国の科学雑誌「ニューサイエンティスト」に発表
本格的な環境調査でPCBは、土壌、大気、水、湖、河、泥土、海、魚、鳥、次々に検出。
それから10年後、1976年アメリカ合衆国で製造禁止(日本では1972年製造および使用禁止)

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996年当時(この書が編纂されていた頃)PCBは、ニューヨーク州北部で生殖能力検査を受けた男性の精子、極上のキャビア、ミシガン州で生まれた乳児の脂肪細胞、南極大陸に棲むペンギンの体内、東京の寿司屋に並んだクロマグロ、モンスーンがカルカッタに降らせた雨、フランス人女性の母乳、南太平洋を回遊しているマッコウクジラの脂肪細胞、食べごろになったブリーチーズ、・・・。
大半の残留性合成化学物質と同じく、PCBも地球全体に蔓延していたのである。

166   ・   167 PCBの旅     食物濃縮について

北極圏に生息する、ホッキョクグマの体内から検出されたPCB−153分子(以下PCBと表記)の冒険は、列車に揺られるところから始まる。ある化学工場で誕生したPCBは、西マサチューセッツ州のGE社を目指していた。
GE社は戦後の一大景気で変圧器をはじめとする、電気設備、家電をフル稼働で生産していた。
新型変圧器に封印されたPCBはテキサス西部の、ビッグスプリングの製油所へ列車で向かう、一刻も早く、新しい製油設備を稼動させ、ガソリンの需要をまかなうためである。新工場完成後、激しい雷雨が工場を襲い、変圧器が修復不能となる。廃棄処分となった変圧器は、運び出され、横にされたさいPCBが滲み出て、駐車場の赤い泥の上にポタポタとたれた。こうして有機物質と相性の良いPCB分子は、埃り粒子に寄り添うこととなった。
テキサスの強風に舞い上げられ、ドンドン飛ばされついに、ある家にたどり着く。そこで今度は、人里離れた、険しい渓谷にある、ゴミ処理所に運ばれる事となる。そこで、水の流れに出会うが、PCB分子は水に溶けにくいため、とどまっていた。激しい豪雨が襲い、ゴミの山をも飲み込むこととなる。捨てられた変圧器とともに砂州に打ち上げられていた。やがて、PCBは誇り分子から分離して、空高く舞い上がり、水蒸気のように、大気中を漂うようなる。
テキサス、アーカンサス、雨に混ざって地上に降りた。セントルイスの北を流れるミシシッピー河あたり、日に照らされ再び大空へ。五大湖周辺ではじめて、液体の状態に戻るのである。藻にしがみつくPCB、それをかじるミジンコ、食されないまま一生を終える藻、やがて枯れ果て藻ともに水没するPCB分子。大半の化学物質ならここで、バクテリアなどで分解されてしまうがPCB分子は残る。いつも、そうだとはかぎらないのだが。


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