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幸福の報告書

の廃材を利用して作った、手すりのない畳2枚より少し広いベランダ風のところ(以前はブロックを組み合わせて階段を作り外へ出るようにしていました、そこに物干し台が有り、使っていました。階段が危ないという事でこれを作りました。)に持ってゆき、容器を置きます、あの風呂のイスも運びます。スースーと部屋へ戻り、もう一つ大事なものを用意します。帽子です。つばの広い麦わら帽で陽射しの強い春から夏、秋まで欠かすことはできません。物干しはスタンド式で周囲に腕が16本ずつ上下2段に開きます。そして最上部に洗濯バサミがやはり四方に四つずつ16個ぶら下がっているものです。いよいよ作業開始です。パタパタとはたきながらタオルを、しわを伸ばしながらTシャツや下着を干します、最後に過酷な(そうは思いませんか)作業がまっています。ハンカチ、靴下など小さいものです、あのイスに載っての干し物で、祖母は小さい身体をいっぱいに伸ばしての作業です、マリヤは祖母にとって究極の健康法だと言って笑っています、本人も大変とか疲れたとか口にしません。祖母は本当にそうなのかな、と思えるほど元気で、面白い親子がいるものだと、私はいつも感心しています。
 ハンガーに掛けて干すものはリビングの窓から直接、昔からのステンレスの竿に届きます。爽やかな季節には外に出て干しますし、散歩がてら家の周りを歩いています。また、燃えるゴミの日には、時々、今日は軽いからと、
50メートルほどのところにある集積所まで、綺麗に手入れをされた、お隣の草花を拝見させて頂きながらのんびりと持っていってくれます。それらが終わるとやっと休息の時、なのですが、休めるのは動き続けていた身体だけで、脳は休める事はしません。
 我が家の新聞はスポーツ新聞と一般紙なのですが必ず両方を持って部屋に戻ります、ベッドに腰掛け、読み始めます。日々の社会の動きや芸能界の噂話、私が巨人ファンだと知っていて、この頃、巨人駄目ね、スポーツのことも話題にします。クロスワードパズルも大好きで、新聞の土曜B版や、次男が時々持ってくる週刊誌に鉛筆で書き込み、文字どおり頭の体操になると言っています。でも数字のものは「ややこしいからやらないの」と言い、挑戦の結果、歯が立たないという結論のようだ。テレビの番組欄はよくチェックしている。若い頃は「風と共にさりぬ」、「戦場に架ける橋」など洋物の映画が好きだったのですが、彼女の中では最近(96歳の最近、昔の基準は難しいものがありますが)の映画は荒っぽいものが多くて見たくなくなったと言い、かわりに時代劇が面白くなり、ほとんど毎日放映されている時代劇を、来る日も、来る日も何時からあれがあるから先にお風呂に入る、今日は遅い時間だから大丈夫、マリヤも気にしていて「早くしないとあの時代劇が始まっちゃうよ」とよく言っています。また、「テレビがあるから今日は、後かたずけ、お願いね」なんと96歳の日常の言葉です。1・2時間、新聞、書物を読んで(もちろん新聞が顔を覆って

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