2005年2月16日午前4時25分の出来事と、三日目の夜、本来の母親となる事ができた「さくら」の顛末    
まえ
つぎ

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二ヶ月が過ぎ、いよいよ予定日も近づき私達は「犬のお産に付いて」という本のページを参考にダンボールで産箱なるものを作り、万一の事も考えて動物病院の先生にも連絡をしておきました。お腹も大きくなり二月十五日予定日です。床にタオルを敷き、さくらの休む場所であるソファーにもタオルとにかくはじめての経験ですので本に忠実に、消毒用アルコール、ガーゼ、・・・ets、様々用意し、マリヤは何度も何度も書を読み、その時をイメージングしているようでした。



 夜半、呼吸が荒くなって落ち着きがなくなり、外へ出てはオシッコ、ウンチの格好をするのですが出るわけではありません。その日はみぞれ交じりのしんしんと冷える一日で、外へ出たがるさくらに私も付いていくのですが、私が寒さに負け「お家に入ろう」と声をかけ、いやいや付いてくるさくらを家に入れてしまいます。実はさくらは外で出産をしたかったのではないでしょうか。浅はかな私達は本での、中途半端な知識で産箱を作るとそこで生むものだと思い込んでいたのでした。「さくら」にとってそれはただのジャマモノだったのでしょう。普段、排泄行為を外でしか、しない「さくら」は当然、外で生むはずですね。とてつもない思い違いをしていたものです。私達がそのことを理解したのはすべてが終わってからでした。
肩で息をしている苦しそうな「さくら」の姿を見ていて、二人で相談し、先生にお願いしようと受話器を手にした時、時計の針は午前四時二十五分を指していました。

 「すぐに連れて来なさい」

妊娠中のさくら

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