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旅立ったグラン

 「小梅」がロープを咥え、彼女の陣地でもある三角コーナーに走ってゆきます。それを追って2匹の子犬が走ります。また、引っ張り合いが始まります。
 そんな日常の風景の中、「さくら」は身体の大きな「グラン」に対してはとても厳しくしていたように思います。「グラン」が「さくらママ」にじゃれ付くと母親は大きく立ち上がるようにして威圧をしたり、首の後ろを甘噛みをしたりしていました。
 4月には「小梅」は出産前から決まっていた、東村山のYさん宅に引き取られ、「さくらママ」「グラン」「ベアトリス」の生活が始まりました。
 5月、我が家では当時94歳(200810月今97歳)の祖母の、型染めの展示会を家で開きました。そこにおいで下さった、Tさんの奥様が「てつ」を見て、その夜、どうしても欲しいと電話を掛けてこられました。私たちはこのまま飼いたいとも思っていましたし、雄犬と雌犬を一緒には飼えないのかな、とも考えていました。突然の申し出に困惑しましたが、結論は、数十年という長いお付き合いのTさんならきっと大切にして下さるからとお譲りすることにしました。
 6月いよいよ、「グラン」の引越しの日が来ました。乗用車の後部座席が倒され、置かれている大きなゲージに入り、去っていく「グラン」の姿が目に焼きついています。写真を見ていただければ解るように、朝の航空公園への散歩、そこにあるドッグランでの運動、多くのお友達とのお遊び、部屋の中で自由に、のんびり休んでいる姿、写真は載せませんでしたがせんが、たくさんのお孫さんたちに囲まれて遊んでいるものも数多くあります。ドアの向こうにいるご家族を「早く出てきて」と待っている「グラン」の後ろ姿はとてもいとおしくさえ感じます。
 その日の朝、土砂降りの雨の中、突然「グラン」がリードを引っ張る事態が発生、15キロもある「グラン」の力はご主人の足を滑らせ、転倒させてしまいます。手に握られていたリードは離れ、傘はとび瞬間、驚いた「グラン」は車道へ突っ走ってしまいました。早朝6時、普段ほとんど通らないのに、その時一台の車が猛スピードで向かって来ました。倒れた「グラン」がそこにいました。呼吸をしていませんでした。
 ずぶ濡れになり、悲しみにくれながら生命の途絶えた「グラン」を抱きかかえ、家へ向かうTさん、その時の思いはとても表現する事は出来ません。
 帰り着いて降ろし、寝かせたその姿は今にも起き上がりそうでした。私も写真を見せて頂いたのですが何の外傷も見受けられず、まるで寝ているだけでした。
 この事故の事を知り、私は、「あの感触を残して」、この世をさった名も付けられなかったさくらの長女の事を思い出していました。
 我が家にて母親と姉妹と暮らした約100日、Tさん方皆さん方に可愛
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